AI活用の話は工数削減に寄りがちですが、EC事業でインパクトが大きいのは売上側です。私たちは自社ECで健康食品とペット用品を販売しており、広告運用と商品ページの改善にAIを組み込んで回してきました。この記事では、売上に結びついた使い方と、結びつかなかった使い方を分けて書きます。
導入の順番から整理したい方はEC運営で「まず何にAIを使う?」AI活用の始め方を先にご覧ください。
最初に前提を揃えます。AIは、訴求軸の異なるコピーを一度に20案出すことができます。一方で、そのうちどれが売れるかは分かりません。学習した一般的な文章の傾向から「もっともらしいもの」を出すだけで、あなたの商品を買うお客様のことは知らないからです。
したがって、売上に効く使い方は次の形に収束します。

逆に「AIに良いコピーを書いてもらう」という発想では成果が出ません。最後の「教え直す」工程がある会社だけが、回すたびに精度を上げていきます。
漠然と「広告文を作って」と頼むと、平均的な文章が出てきます。効くのは軸を指定して出させるやり方です。
複数モールに出店している場合は、モールごとに評価される点が違うため展開の仕方も変わります。詳しくはモール運営で使うAI活用の実務|楽天・Amazon・Yahooの重複作業を減らすで書いています。
特に効果が高いのは最後の「お客様の言葉起点」です。レビューや問い合わせの文面をAIに読ませ、頻出する表現を抽出させてからコピーに落とします。作り手の言葉より、買った人の言葉のほうが刺さります。これは自分たちで書いていると気づきにくい部分で、AIに大量のレビューを読ませる価値がはっきり出る使い方です。
広告管理画面の数値を貼り、「どのクリエイティブが伸びていて、共通点は何か」を整理させます。人が見ても分かることですが、担当者が変わっても同じ観点で振り返れる点に価値があります。
ただしAIの分析結果をそのまま意思決定に使ってはいけません。データ量が少ない期間の差はただのばらつきであることが多く、AIはそこに理由を付けてしまいます。仮説を出す道具として使い、判断は人が行ってください。
健康食品・化粧品を扱う場合、これは省略できません。AIは「改善します」「効果があります」といった薬機法上使えない表現を、指示しなければ普通に書いてきます。「最安値」「No.1」のような景品表示法に関わる表現も、根拠がなければ使えません。
私たちは、生成時に禁止表現リストを渡し、そのうえで入稿前に人が必ず確認する二重の構えにしています。AIに法令判断をさせないことが原則です。この線引きは、そもそも人が判断すべき領域だからで、精度の問題ではありません。表現規制やレビューの扱いを含む法務面の整理はECのAI活用と法務リスク|薬機法・景表法・個人情報・著作権の実務ラインにまとめています。
商品ページでAIを使うとき、文章を書かせるより先に構成の見直しに使うほうが効果が出ます。
商品情報を渡し、「この商品を検討している人が購入前に不安に思うことを20個挙げて」と指示します。出てきた項目のうち、現在のページで答えていないものが改善ポイントです。
自社の商品は詳しすぎるために、お客様がどこで迷うかが見えなくなります。この使い方は、その盲点を突くのに向いています。実際の問い合わせ内容と突き合わせると精度が上がります。
現在の商品ページのテキストを渡し、「購入判断に必要な情報で不足しているものはどれか」を挙げさせます。サイズ感、使用期間の目安、他商品との違い、定期便の解約条件など、書いたつもりで抜けている項目が見つかります。
レビューを分類させ、不満点と要望を頻度順に並べます。ページ改善だけでなく商品改良のネタにもなります。件数が多くて誰も読めていない状態のショップほど、ここに未使用の情報が眠っています。
成果が出なかった使い方も共有します。同じ回り道をしないための材料としてお読みください。
広告と商品ページの改善をAIで回すと、「この商材ではこの訴求が効く」「この書き出しは反応が悪い」という知見が溜まります。これを担当者の頭の中ではなく、指示文とチェックリストの形で残すのが最後の工程です。
ここを整えておくと、担当者が変わっても水準を保てます。逆にここを飛ばすと、AIを使いこなせる人が抜けた時点で元に戻ります。組織として残す設計はAI活用を属人化させない|EC企業のための「内製化」ロードマップで詳しく書いています。
渡す材料が一般的だと似ます。差がつくのは、自社にしかない情報を渡したときです。レビューの実際の文面、問い合わせでよく聞かれること、製造や仕入れの背景。これらを渡せば他社が同じものを出すことはできません。「AIの性能差」ではなく「渡す材料の差」で決まると考えてください。
技術的には可能ですが、商品そのものを写す必要があるEC広告では、実物の撮影に代えられない場面が多いです。背景の差し替え、サイズ違いの展開、構図案の検討といった補助用途では実用になります。商品の見た目が変わってしまう加工は、景品表示法上のリスクがあるため避けてください。
広告は配信して数字が出るまでの期間で決まるため、商材と予算次第です。一方、商品ページの疑問洗い出しやレビュー分析は着手した週に改善点が見つかります。短期で成果を確認したい場合は、後者から入るほうが判断しやすいはずです。
広告と商品ページへのAI活用は、自社の情報をどう渡すか、そして表現のチェック体制をどう組むかで結果が変わります。私たちは自社ECで同じ工程を回してきた立場から、担当者が自分で改善を回せる状態を作るAI研修と、運用設計に継続的に関わるAI顧問をご用意しています。
取り組みの内容はAI活用事例をご覧ください。自社の商材で何から着手すべきかを相談したい方は、AI事業のお問い合わせからご連絡ください。